令和4年度も高校剣道人口は大きく減った。弓道との比較で考える

観の目見の目

 令和4年度の高体連登録人数が高体連HP上で発表されている。全国の高校剣道部員総数は3万2861人だった。

 単行本『剣道の未来』では、はじめて4万人を割った令和元年の3万8435人という数字まで紹介した。その後令和2年度3万4960人、令和3年度3万4861人と推移してきた。令和3年度は微減に留まり底が見えたかと思ったが、今年度はまた減った。ちなみに同書を未読の方のために補足すると、平成15年度は5万9千人余りだった。

 令和元年度と4年度の比較では5574人の減少である。コロナ禍で部活動もままならない時期であり仕方がないととらえる人もいるだろうが、『剣道の未来』でも比較対象とした弓道は、その3年間で300人も減っていないことに驚かされる。令和4年度の登録者数は6万1994人である。すごいな弓道。

 『剣道の未来』では、剣道がマスコミ等で取り上げられる機会が少ないことを人口減少の要因の一つと書いたが、読んだ方から、比較対象としている弓道だってマスコミで取り上げられる機会は少ないじゃないか、という指摘を受けた。

 確かにそうなのである。全日本弓道選手権大会は今の時代だからライブ配信はあるものの、ざっと調べてもテレビ放映はないようだ。剣道より露出が少ないかもしれない。剣道未経験の私が剣道日本編集部に入った時点で1人たりとも剣道選手の名前を知らなかったように、今、弓道選手の名前は1人も知らない。弓道に関わっていないほとんどの人がそうだろう。

 だから明確な答えは見つかっていないのだが……少し弓道の事情を探ってみた。

 弓道関係のサイトを見てみると、高校や大学を卒業したらやめてしまう人が多く、社会人から始めてもあまり定着しない、という現状があるようだ。高齢化しているという指摘もある。

 全日本弓道連盟の登録会員数は平成27年時点で14万1000人だという。一方剣道人口は、初段以上を取得したのべ人数(つまり昭和27年からの合計)が170万人以上という数字がよく見られるが、当然やめてしまった人も含んでいる。平成20年に全日本剣道連盟が「活動中の剣道人口」を調査しており、約48万人だった。これがかなりリアルな数字だと思う。今はもう少し減っているだろう。

 逆に弓道連盟の数字にも段位を取った後やめてしまった人数が含まれるのか定かではないが、いずれにしろ高校生、大学生を除いた大人の競技人口は、剣道の方がずっと多いことは間違いない。弓道は弓道場がなければできないので施設が足りないからではと想像したが、全国に1000箇所以上はあるそうだ。「リバ弓」の人はあまりいないのだろうか。

 そうしてみると、高校生の弓道人口が多いのは、高校生からほぼ全員が初心者でヨーイドンで始められる、という理由が一番大きいのかもしれない。幼稚園や小学校低学年から中学までしていたスポーツでいい成績が残せなかった、飽きてしまった、他のことをやってみたい、といった人たちの受け皿になっているのではないか。その中には剣道をしていた子もいるのだろう。

 言い換えれば弓道は高校生・大学生に特化して人気のある競技ということだ。小学生や中学生があまり普及していないことが、逆に奏功しているということだろうか。

 弓道にも高校生や大学生などを中心に「的中」すればいいという考え方と、そうではなく高段者を中心に、スポーツではなく武道なのだから「人格的成長」を目指すべきという考え方の対立があるようだ。まあ剣道と同じだが、部外者としては剣道と違って当たったか外れたかの結果は誰が見ても明らかなのだから、品格とか礼儀作法が評価されるのは当然としても、的中した上での話だろうと思う。しかしそうではないらしい。たとえば全日本弓道選手権大会でも下位の勝敗は採点制で決まる(4射中2射は当てなければいけないが)。的中という結果だけで評価されるのでは、スポーツであるアーチェリーと同じ、という指摘も目にした。

 部外者にはとても分かりづらい(そして剣道も部外者から見ればまったく同じように分かりづらい、というのが私の持論である)。そのへんが逆に社会人になって続ける人が少ない理由になっているのでは、と想像したりもする。いずれにしても、弓道は弓道で普及のために考えるべき問題は多いのだろう。

 剣道は弓道のように他のスポーツに飽きたり他のことをしてみたい生徒たちの受け皿にはなれないのだろうか。少年剣道がこれだけ盛んで、剣道部員のほとんどが小学生のときから剣道をしているという状況では、なかなか初心者は入りにくいだろう。中学から始めるという生徒は一定数いると聞くけれど……。たとえば居合道部が高校にあればやってみたいという生徒が結構いるような気がするが、それは剣道連盟としてはプラスになるとしても剣道人口を増やすということとは少し違う。なかなか妙案はない。

 高校弓道部員がいくら多くても大人は少ないのだから、剣道の方がうまくいっている、高校剣道部員は減ってもいい、という話ではまったくない。当たり前だが、高校生の人数が少なくなれば社会人となって続ける人も、「リバ剣」も当然少なくなる。今は多い中高年、高齢者の剣道人口もやがて減り始める。

 人口を増やすために、剣道と弓道がお互いから学ぶところがあると思う。同じ武道として知恵を出し合って考えていくことも必要なのではないだろうか。なかなかそういう機会は生まれそうにもないが。

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